おい、気分で投資すんな。

NOISE 上: 組織はなぜ判断を誤るのか?
ダニエル・カーネマン (著), オリヴィエ・シボニー (著)


 「ファストアンドスロー」で有名な、カーネマンさんの本です。人間の判断には、大きなバイアス、偏りがあります。「見積もりが楽観的過ぎる」とか、「損失を利益の2倍苦痛に感じて避けようとする」とか、「自分の見解に沿った証拠しかみない」とか。

 すべて、投資の大きな妨げになります。だって、正常に判断できないんだもん。

 この本は、そういったバイアスではなく、「ノイズ」について扱います。判断の「ばらつき」。同じ患者をみても、お医者さんによって診断が違う。同じ事故をみても、算定担当者によって、出す保険金が違う。それどころか、同じ担当者であっても、時間と場所を改めて判断してもらうと、結果が大きく異なる。

 つまり、同一人物ですら、その日の気分や体調、天気によって、着眼点や評価が異なり、判断も異なるわけです。しかも、とても、大きく。数値的に2-3割ぶれるとか、結論が正反対になるなんてこともあります。こんなブレブレで、よい投資判断ができるはずもありません。もちろん、あたしも、日によって、結構、見解が違います!「プレミアグループ最強!!」と思っている日もあれば、「海外事業がどう展開するか、読めない部分があるよね・・」とちょっと弱気なときもあります。

 このブレ、しかも、看過できないレベルの大きなブレ。克服するには、どうすればいいのでしょうか?本に書いてある対策を、あたしなりに投資に敷衍してみると、

①アルゴリズムに頼る。
 例えばですが、銘柄選択のとき、「①競争優位性、②割安度、③成長性、の3点を、5段階評価して、合計点でもって、投資するかどうか、決める」みたいなアルゴリズムを作っておく。それを機械的に適用する。これであれば、「その日の気分で」ブレる可能性は大幅に減ります。

 医療の分野では、「症状ごとにスコアをつけて合計点でもって診断する」なんて、フツーにやっていることですね。人事評価でも、同じような試みがあります。「機械的にやる」というと、どうしても抵抗感がありますが、安定した判断をするためには、評価項目を固定し、粛々と適用する必要があるわけです。もちろん、評価に役立つ評価項目である必要はありますが・・・。粛々と適用「しない」 人間が、その日の気分に応じてファジーに判断するよか、マシってこと。

②絶対的判断ではなく、相対的判断を行う。
 いきなり、「エイヤ」で決めるよりも、具体的な比較対象があった方が正確に判断できます。投資候補銘柄と監視銘柄を比べる形で投資判断をするのがいいでしょう。あるいは、上記のアルゴリズムについても、

「競争優位性・・・チャームケアと同等なら0点、グリムスと同等なら1点、オープンハウスレベルなら2点」

みたいに、尺度を具体化するときにも使えます。

③売買や判断を複数回、行う
 「時と場所を変えると判断が変わってしまう」ので、複数回判断して、その平均をとります。一度に余力をつっこむのではなく、徐々に買ったり、売ったりしていく。意見の撤回もまったく厭わない。


 判断に、日によってバラツキがある気はしていましたが、正面からそれを扱い、それを克服しよう、という気にはなかなかならないものです。

同じソフト開発者に同じ作業にかかる日数を二度見積もってもらう実験では、1回目と二日後で平均71%もの乖離があった(同書14頁)。


いやー、おそろしいですね、ノイズ。その存在を、明確に自覚し、警戒しておきたいものです。

ちなみに、「頻繁に株価を見ない方が投資成績がよい」というのも、ノイズで説明できると思います。つまり、株価を見るたびに、「取引する・しない」を毎回、判断していれば、当然、「ぶれた判断が下されて実行される」確率も上がっていきますもの。

今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い1日をお過ごしくださいね。

にほんブログ村 株ブログ 株 中長期投資へ

⓪認知の歪みをただす本の書評

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA