投資で重要なのは単年のROEではなくて

三位一体の経営
中神康議 (著)

を読みました。

前半には、バフェットやアインシュタインは複利を重要視しており云々、という話。後半は、参入障壁のパターンなどについて書かれています。

死ぬほど勉強になったのが、経営のタイプの場合分けです。中神さんは経営のタイプを4つに分けます。

1 額の経営
  売上額や利益額の拡大を追うタイプ。それらの拡大は、実は長期的な株価とは関連しない。

2 率の経営
  利益率の向上を追うタイプ。それの向上は、実は長期的な株価とは関連しない。

3 利回りの経営
  投下資本に対する利回りを追うタイプ。長期的な株価とは関連する。

4 複利の経営
  「利回りの経営」のように投下資本に対する単年のアウトプットの大きさを喜ぶのではなく、そのアウトプットを再投資に回すことで追加的なリターンを得ていく。これを高い水準で長期間持続させることによって、投下資本そのものが増殖していくことを狙う」(同書44頁より引用)。長期的な株価とは関連する。

あたしは今まで、1~3をごっちゃにして、特に優先順位を考えていませんでした。まあ、あたしに言わせれば、利益率が高い≒ROEが高い、なので2と3はほとんど重なるのですがね。1については、「株価が安ければ成長ゼロでもいい・・・かな?」とか適当に考えていました。

重要なのは、3と4が違う、ということです。単年で高いROEが達成できたかではなくて、継続的に高いROEが達成できるかどうか、考える。時間の概念の導入。

やることは高ROE(≒高い利益率)の株を探してクリックして買うだけですが、視点は四次元になります。

何が違うかというと、主にバリュエーションかな。高いROEが継続できれば、例えば30%のROEが継続できれば、100万円は130万円になり169万円になり220万円になり285万円になります。4年で3倍弱になります。ROE40%であれば、100万→140万→196万→274万と、3年で3倍弱になります。よって、「高ROEが継続する」なら、今、PERが高くとも、許容できる余地が高くなります。指数関数的に株主資本が増えるからね。

複利って、すごいですね。儲けが儲けを生む、というだけですが、その威力は計り知れません。人間の直観を超えてしまうので、毎回、計算した方がいいですね。バフェットも、手元に複利表を置いているそうです。

あとは、「高ROEの継続を目指す」という戦略がはっきりすると、上記1についても整理がつきます。成長がゼロだと、ROEが高い事業に再投資できず、配当や自社株買い、M&Aになってしまい、複利ではなくなる。よって、投資対象としてはバツです。
また、WEB系の事業など、「成長に資本投下がほとんどいらない」事業もバツになるはずです。事業として効率はいいかもしれませんが、再投資はできないので複利ではありません(M&Aが巧い場合や、自社の株価が安くて自社株買いが奏功する場合は別ですが。また、配当をもらって、別の(資本効率が良い)株に自分で再投資できればやはり別ですが。)

バフェットは、「所有すべき最も良い企業は、長期間にわたり大量の資本を利用し、非常に高い利益率で増やしていくことのできる企業です」と言っていますが(パンローリング 「バフェットからの手紙」第五版213頁より)が、最初、あたしには意味が分かりませんでした。必要な資本なんて、ちいさな方がいいのではないかしら?って。でも、今なら意味が分かります。大量の資本が必要でない事業は再投資できないので、複利にならないんですね。

バフェットも、しかし「利益率の高い企業のほとんどはそれほど多くの資本は必要としません。こうした企業の株主は通常、大半の利益が配当として支払われるか、大規模な自社株買いによって利益を得るということになるでしょう」(同書214頁)と、先の文章に続けて綴っています。


よって、狙う会社については、相変わらず高ROEのものを狙いますが、ゼロ成長の会社はもちろん、投資CFが「少なすぎる」ものも除外することにしました。

たとえばフルキャストは、ROE30%、PER一桁と、数値的にはとんでもなく優秀な会社です。でも、営業CFの1ー2%しか投資CFを必要とせず、今後の成長も一桁前半でしょう。つまり、ガバガバキャッシュが余ってます。同社は、それを配当、自社株買い、M&Aに回しています。コンサルとか人材派遣、或いはウェブサービスなど、こういう系統、つまり営業CFに対して投資CFがほとんどない、という会社はかなりありますね。

これらは、単年でみれば素晴らしい会社ですが、たとえばフルキャストは営業CFの1%しかROE30%で再投資できていません。PER9ですから益利回り11%ですが、「単利の」利回り11%です。複利の方がいいですね。(固定資産への投資は不要だが)「人件費に儲けを再投資している」と言えますが、数年連続で20-30%の複利で回していけるほどの投資額ではないでしょう。よって、高いROEであっても、成長が止まってしまえば、意味をがありません。ということで、複利を目指すあたしは、買いません・・・・たぶん。

今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い1日をお過ごしくださいね。

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投資の総論本の書評

5件のコメント

  • naoto777_99

    大変ご無沙汰しております。久しぶりのコメントです。
    いつも楽しく拝見しております。
    なるほど~~と思える良記事でした。

    ジェイエスビーなんかいかがでしょうか。
    (保有銘柄なのでポジショントークですが)
    増えた資本を学生マンション投資に再投下しつづけて純資産が指数関数的に伸びています。
    以前増資をくらったので、資本を食いすぎる事業は嫌だ!ということで持ち高をへらしましたが、この記事を読んで再評価しようかなと思いました。

    学生マンションの市場規模以上には成長しようがないので、その先は海外とか新たなチャレンジが必要になりますが、それまではまだ着実に成長していけると思います。
    11月末に中期計画を出すという噂があるそうです(楽しみ)

    そういう意味ではプレミアグループも自動車ローンのシェア11%くらいなので、20~30%のシェアくらいが上限でしょうか。

    このあたりのSuriaちゃんのご意見を伺いたいです。

  • リタイア希望

    2813和弘食品はどう思いますか?
    興味ありますか?

    • suriaちゃん

      え、興味無いです、ごめんなさい!

  • けん

    suriaさん、こんにちは。
    私もkeeper技研を保有しており、高評価いただき嬉しいです。

    keeperはroeが高く、まだ店舗出店余地はあり、シェア拡大余地もあるので売る気はありません。
    しかしながら、株価も上がっている為なかなか買い増しできません。
    perで見ると今の株価は割安ではないですが、べらぼうに高くもないです。

    節目として5000円付近になれば買いたいですが、おそらくそう思ってる人は多そう。

    簡単に言うとkeeper技研のバリエーションがわかりません。

    suria様はkeeperの下値余地、上値余地、現実的な買値はいくらぐらいを考えてらっしゃいますか?

    • suriaちゃん

      こんにちは、すでにキーパーを保有とはお目が高い、うらやましい・・・。

      おっしゃるとおり、今はたくさん買える値段でもないですよね。

      詳しくはあさっての記事に書きますが、30%成長を連発した場合の適正価格7000円強ですので、5000-7000円くらいかな、と思っております。で、高成長が前提になりすぎているので、やはり5000円代前半で買わないと、「成長鈍化しました」というときに安全域がないかなーと思います。

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