投資のカナメ、永久成長率①


DCF法では、「企業が今後永久に稼ぐ現金の累積」を企業価値とします。

実際の計算は、5年後くらいまで、具体的にFCFを計算して足し算を行い、6年目以降は、「X%でFCFが永久に成長していく」と仮定して「継続価値」というのを出し、これを、5年目までのFCFと足し合わせます。

で、企業価値の6-8割は、この「継続価値」が占めるんですよ。つまり、乱暴に言うと、「企業価値≒継続価値」なわけです。

では、継続価値をどうやって計算するかというと、5年目のFCF×(1+永久成長率)を、(割引率ー永久成長率)で割戻します(それを現在価値に引き直します)。

で、この式、最大の変数は「永久成長率」なんですよ。これを1%にするか3%にするかで、適正価格が3000円になったり5000円になったり、それぐらい、ブレます。割引率を8%にすると、永久成長率が0%なら8%でFCFを割るつまりFCFの約12倍が継続価値になります。永久成長率が4%なら8-4で4%で割るのでFCFの25倍が継続価値になります。

ですから、永久成長率が企業価値を大きく左右するわけです。

では、永久成長率は何%が妥当化か?

6年目以降、その企業は、だいたいどれくらい成長するのか?


ひとつの解が、「その国の経済成長率」あるいは、それにインフレ率をプラスしたもの。日本だと0-1%というところ。理由としては、「国の経済成長率より大きな永久成長率だと、100年後200年後に、その企業の企業価値が国の経済規模を上回ってしまう」だとか、「多くの企業の成長率は国の経済成長率程度に収斂する」だとか。

まあ、一般論としてはそうだろうな、という気がします。

ただ、具体的にみてみると、ちょっとおかしいですね。

割引率が8%だとすると、40年後のFCFは33分の1に割り引かれます。30年後のFCFであれば12分の1です。40年後以降の成長率がどうだ、なんて、実は企業価値にほとんど影響ないんですよ。

そんな遠い未来よりも、「5年目まで20%成長を連発していたROE20%超えの企業が、6年目に成長率1%になるか?」と問いを立てたほうが、よほど建設的であり、そしてその回答はNOでしょう。

フツーの企業の場合、保守的に0-1%にするのはアリだと思いますが、財務健全、高成長、高資本効率ということで選びぬいた企業の永久成長率が1%というのは、逆に間違っていると思います。そして、変に保守的に設定してしまうと企業価値が半減してしまうのは、先にみたとおりです。

じゃあ、3%なのか?5%なのか?


ここらへんは正解があるはずもなく、「エイヤ」で決めるしかないですね。

ひとつのヒントとして、ROEが20%であれば、儲けの4分の1を再投資すれば、5%成長を達成できます。5分の1再投資であれば4%ですね。

このあたりをヒントに、最初の5年間の成長率が

10%程度の企業:0-1%の永久成長率で異議なし。
20%程度の企業:3-4%くらいかなあ。
30%程度の企業:5%もありかも。

って感じですね。もちろん、ROEが20%以上であり、それが6年目以降も下がらないだろうと見通せる前提です。


割引率は、投資家アンケートなどからおおむね8%くらいで異議ないし、自分が期待する収益率と関係する以上、詰めてもあまり意味がないので、永久成長率はがんばって考えてみました。DCF法のテクニカルな論点って、実はこれくらいですよね。

楽観的すぎるのも、悲観的すぎるのも、ダメ、永久成長率。

話は続きます。

③バリュエーション、そして売り

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