ベンチャー・キャピタリスト──世界を動かす最強の「キングメーカー」たち
後藤直義 (著), フィル・ウィックハム (著)


いろんなＶＣのインタビューが掲載されている本です。１回、このブログでも取り上げたと思いますが、読み返すとまた味わい深いので、またまたご紹介しておきます。

「私はスタートアップの創業者に、必ず投げかけている質問があります。それは、「すべての情報にアクセスできるユーザーがいて、最も合理的に判断をするとしたら、果たしてあなたの提供するサービスを選びますか」というものです（同書１４９頁）。」


うーん、いい質問ですね・・・・ユーザーの無知や情報格差を利用してではなくて、本当にそのサービスが優良なのか？ってことですね。このテスト、ちょっと、やってみましょう・・・


プレミアグループ
金利が安ければいいでしょうから、合理的なユーザーであれば、プレミアグループではなく、金利の安い銀行からマイカーローンで借りちゃうでしょうね・・・。
ただ、プレミアグループのお客が消費者つまり車を買う方ではなく、「加盟店の中古車販売店」と考えると別です。プレミアグループでローンを組ませれば、故障保証も付加してその分キックバックもらえるし、そのおかげで故障品とのクレームがこなくなるし、カープレミアクラブに入れば引揚車両のオークションにも参加できる、販売店用ソフトも無料で使える、となれば、合理的な加盟店なら、ジャックス・オリコでなくプレミアグループを選ぶでしょう・・・キックバックに差がない限り。

オープンハウス
「勤務先に近ければ、いびつな三階建てでもいいや」という客は一定数、いるでしょうから、すべての情報をもっているユーザーでも、３階建て戸建て、買う人は買うでしょうね。マンションも、立地が良ければ普通に買うでしょう。どちらかというと、売却より仕入れが問題ですね。

ロードスターキャピタル
お客さんは機関投資家ですが、すべての情報をもっているなら、「同じような価格の同じようなビル」があれば、ビル売却のときに値下げ交渉されちゃうかもしれませんね。まあ、それでも、東京のビルがばんばん売りに出ているというものでもないと思うので、値下げ交渉の末であっても、相場の価格で売れるわけですが。

グリムス
電気代が高騰していますから、補助金ももらえて電気代削減できるとなれば、ソーラーパネルを買うのが合理的でしょうね。ただ、すべての情報をもっているなら、グリムスより安い業者に頼むひとはいるかも。ただ、中小事業者向けにソーラーパネルを販売している業者はあまりいないと聞いています。

イントラスト・ジェイリース
会社の保証がつければ、滞納に困ることはなくなるので、合理的な大家さんであれば家賃保証に加入するでしょうね。ただし、「イントラストに」「ジェイリースに」頼むかどうかは、ちょっと微妙かな。すべての情報をもっているのであれば、最速・最安値の保証会社に頼むでしょうから。

ＫＥＥＰＥＲ技研
たまたま近くに同レベルのコーティングが同レベルの値段以下でできればそっちに行くかもしれませんが、店へのアクセスのしやすさ、品質、どれをとってもＫＥＥＰＥＲに行くのが合理的でしょうね。

アップガレージ
中古の車のパーツをメルカリなどで買うと、適合性や取り付けが問題になるので、アップガレージで買う人は、常に一定数、いるんでしょうね。

ラウンドワン
競合となる施設が限られている以上、「ほかの施設のほうが安いから、ラウンドワンはやめておこう」ということにはならなさそう。


こうしてみてみると、

①差別化しづらいサービス・・・安い競合がいれば、値段でそちらを選ばれてしまうので、このテストには不合格となります。

②差別化できるサービスや、画一的な比較が難しいサービス（中古品、土地の売買など）・・・少なくとも値段競争にはならず、一定の需要が見込める。

こんな感じでしょうか。現実には、ユーザーが完全な情報をもって合理的に行動することはあまりないので、厳しすぎるテストですけれども、「ユーザーの無知を利用して儲けている」のであれば、どこかで破綻しておかしくありません。

株を買う前に、「完全に合理的なユーザーなら、その企業から買うか？」考えてみるのも、いいかもしれませんね。

今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い１日をお過ごしくださいね。