ふたたび永久成長率について

スタートアップ・バリュエーション: 起業家・投資家間交渉の基礎となる価値評価理論と技法
池谷 誠 (著)

を読みました。

ペインメソッド、バーカスメソッドなど、スタートアップにしか適用されない特殊なバリュエーション方法の記載が充実していますが、あたしの興味はそれではありません。あくまでDCF法です。

そして、DCF法のキモは永久成長率をどうするか、です。

普通の本だと、「国の経済成長率以上に設定すると、いつの日かその企業の規模が国の経済を上回るからありえない」ので経済成長率以下に設定する、と書いてあるだけです。そうすると、日本企業では1%前後に設定することになります。

いっけん、もっともらしいですが、「計算上、200年後に日本経済を凌駕する」ような成長率でも、おかしいでしょうか?30年の社歴があって今も1%以上成長している上場企業は珍しいでしょうか(生存バイアスかもしれんけど)?いままで25%成長を連発していた企業が、6年後に永久成長率1%になるとするのが、合理的でしょうか?

そんなわけ、ないよね。


ひとつの答えが、この本に書いてありました。

「スタートアップ企業の場合、予測期間と継続期間との間の成長率の格差が大きく無理が生じるため、上述のように拡張期間を導入することがおおい」(同書107頁)

ふつうのDCF法であれば、予測期間5年目までの成長率を20%とか15%とかに設定して、6年目以降の継続期間は、いきなり永久成長率1%になるという異常な仮定を置くわけですが。スタートアップでは、さらに6-10年目まで、たとえば8%成長になる、みたいな、バッファとなる期間、拡張期間を設定するわけです。なるほどねえ。


実際の計算結果は、「永久成長率を高めに設定する」のとそんなに変わりませんが、「25%成長を連発していた企業がいきなり1%成長になる」という異常な仮定よりはかなりマシです。

エクセルで、「6年目以降は、成長率が漸減していく」モデルも作ってみたのですが、なんだか面倒ですね。今後も、20-30%成長を達成している企業は、永久成長率を高め(3-5%くらい?)でやっていこうと思います。


ちなみに、バフェットは、

「マンガーと私が株を買うときは、会社の一部分を所有するつもりで買い、会社ごと買う場合と同じような分析を行います。まず、その会社の5年後以降のおおよその利益を無理なく予想できるかどうかを考えます。もしそれができて、価格が予想利益の下限と比較して妥当ならば、その株を買います。」と言っています(「バフェットからの手紙」第5版 パンローリング 170頁)。

誤植ではありません、5年後「以降の」おおよその利益を無理なく予想できるか、です。「今後5年間の」利益予想ではありません。

井村さんなんかは、「時間軸は2-3年でPLを予想する」とおっしゃっていますが、逆ですね。5年後「以降」が予想できるか、です。5年後以降?つまりは永久成長率が何%か予想できるか、ってことです。バフェットがDCF法を意識して言ったのかどうかは不明ですが、非常に興味深い発言ですね。

今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い1日をお過ごしくださいね。

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③バリュエーション、そして売り本の書評

2件のコメント

  • 保守的投資家

    マンガーと私が株を買うときは、会社の一部分を所有するつもりで買い、会社ごと買う場合と同じような分析を行います。まず、その会社の5年後以降のおおよその利益を無理なく予想できるかどうかを考えます。もしそれができて、価格が予想利益の下限と比較して妥当ならば、その株を買います。
    長期的な利益を考える事によって現在は割安に見えるけど本当は違う銘柄をつかまされる確率がかなり下がりますよね。きちんと勉強して割安な銘柄を買おうとする人ほどつかまされる罠を回避出来るのは大きいと思う

    • suriaちゃん

      あたしもそう思います、ふつうは10年先なんて考えないですよね。永久成長率的にはそこが大事なはずなんですが。

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