銀行視点で会社をみると?

実践!コーポレートファイナンス: 強いCFOと財務部が企業価値を高める
小林 俊之 (著)

を読みました。

コーポレート・ファイナンス・・・つまり、「企業価値は将来のキャッシュフローで決まる。会計上の「利益」ではない」とか・・・「企業は資本コストを上回る利回りを上げなければならない」とか・・・まあ、そういう理論ですね。

ただ、この本は、元銀行員の方が書いているので、「銀行から見たらどうか」という点、そして借入について、非常にくわしく書かれています。類書とは全然、ちがっていて、勉強になりました。


たとえば、銀行は、決算書のどこをみるのか?


「財務部が貸借対照表で最も注目する項目は現預金の動向」
【同書60頁より】


なるほど・・・なぜ現金が増えたのか、借り入れによって増えているのであれば、借入目的である設備投資にきちんと使われたかどうか、運転資金名目で借りたのに余っているのであれば借りすぎではなかったのか・・・・

うーん、やはり投資家とは目線が異なりますね。成長性がどうとかより、返してもらえるかどうか。申告された借入金の使途が正しいか。借入額が過剰ではなかったか。なるほどね。


ほかにも、資金調達について色々かかれているので、あたしの理解をまとめてみます(本の引用ではありません)。お金が足りない場合は・・・

1)まずは、当たり前ですが、内部資金を使う。

2)それでは足りない場合で、運転資金など短期需要であれば、銀行から短期で借りる。設備投資など長期需要であれば、長期で借りる。・・・・ってことは、短期借入金が多いと、あやういって言えるかな。

3)格付けがとれる会社の場合は、社債を発行して投資家から借りることができる。銀行借入とちがうのは、元本を「一括で」返せばいいってこと。銀行借入だと、「元本の一部と利息を毎月返済する」のが普通なので、社債のほうがキャッシュに余裕がでます。これは大きなメリットです。期日までほとんど返さなくていい。ただし、社債では「借り換えできない」のがデメリットです。一時的な資金需要にしか適さない。

 つまり、銀行借入ではなく社債を使うってことは、「途中であんまりキャッシュ生まないかもしれないけど、ある日、がっつり儲けが出る一過性の投資」をするってことですね。

4)そして最後が増資。ひろく株主を募集する公募増資と、特定の第三者に出資してもらう第三者割当増資があります。借入とちがって、「返さなくていい」という恐ろしい資金調達です。ただし、借入ならその利息は「経費」になって節税になりますが、株主への配当は経費にならず節税になりません。また、株主は、理論上、7-8%くらいのリターンを要求するので、増資で得た資金は実はコストが高いのです。銀行が貸してくれない場合の最後の手段でしょうね。

 それなのに増資するってことは、銀行が貸してくれないような、大規模であったり、返済が確実とまでは言えないレベルの投資、ということになります。あるいは、財務状況が悪い・・・。


こういうことを知っていると、「いきなりステーキが、投資ではなく運転資金を獲得するため、増資かあ・・・銀行に借入を断られたんだな・・・」とか、「オープンハウスが初めて社債100億円発行、返済は3年後か・・・・3年で芽がでる投資・・・それまで元本の返済はしたくない・・・・なんだろ?」とか、いろいろ、想像できますね。


なぜ「自己資金でもなく借入ではなく」社債や増資をえらんだのか、考察できると、理解が深まります。投資という意味では周辺的なことに過ぎませんが、類書がないので、本棚にあると安心です。

今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い1日をお過ごしくださいね。

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本の書評

1件のコメント

  • ピルロ

    suria様、こんにちは。
    いつもブログやツイッター参考にさせていただいてます。
    ツイッター拝見しました。

    キーパー技研を打診買いされたんですか?
    以前保有していたのは記憶してましたが、確かその時は2000円台。
    今は1.5倍ぐらい株価が上がると記憶しており、意外だなと思いました。

    perも割安ではないと当方は考えており、インフレで利益率悪化の懸念もあります。
    割安前提ならまだしも、今の株価でなぜ買われ、またどういう経緯で再度ホルダーになられたか教えていただけると幸いです。

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