超ド級の投資本がでたよー①

わが投資術 市場は誰に微笑むか
清原 達郎 (著)

を読みました。著者は伝説的なファンドマネージャーです。

投資戦略は明確で、「割安小型株の中から「割安小型成長株」を探す」(同書121頁)です。

ここまでは、まあ、よく聞く話ですが、この本は割安株の定義も成長株の探し方も明確にされているのがすごいところです。

清原さんがおっしゃる割安株とは、「PERが低くて、ネットキャッシュ比率が高い」こと。PER+ネットキャッシュ比率という、この組み合わせが絶妙なんです。

PERが低い株って、結局、ボロ株が多いじゃないですか。特に、「借金が多い株」がよくヒットします・・・不動産業とかね。

なぜかというと・・・・PERって、財務構造がぜんぜん評価されないんですね。たとえば、EPS100円の株が500円であればPER5ですが、この会社がキャッシュを1兆円かかえていようが借金が1兆円かかえていようが、PERはかわらず5です。それじゃあ割にあわないので、借金の多い会社は原理的に利益のわりに株価が低い=PERが低く出ることになります。しかし、それは割安ではない(負債があることによる当たり前の減価)、という弱点があります。

借金が多ければ、その会社を買収したとしても、借金の元本もどこかで返済しなければならないので、株主価値は下がります。よって、株価ひいてはPERが低くなるのは当たり前です。これは割安ではない。

逆に言うと、「借金がないのにPERが低い」というのは、まさに割安ということです。だから、PERをみるときは、必ずBSもみる必要があります。


さらに、PERも非常に面白い使い方をされています。PERから永久成長率を逆算している。つまり、(金利が2%かつネットキャッシュもネットデットもなしであると仮定すると)PER5というのは、毎年18.4%減益していくことが織り込まれている、とおっしゃいます。

結局、PER5って、「5年分の利益で買えちゃう会社」なわけですから、6年目には利益がゼロということを織り込んだ株価なわけです。金利も含めて正確に計算すると、「毎年18.4%減益していくことを織り込んでいる」という表現ができます。

PER10なら8.2%の減益、PER15なら毎年4.8%の減益が織り込まれている計算になります。

であるから、現在の日本の金利を前提にすると、PER10なんて激安だ、ということだそうです。なるほど、こんな考え方、したことなかったなー。


さらに、清原さんは、「そういった割安株のなかで、小型の成長株を探す」といいます。なぜか?成長に従ってPERが切り上がるので、成長による株価アップに加えて株価が何倍にもなるから、だそうです。

逆に、PER30なんかの成長株だとPERが切り上がることは少なく、成長鈍化でPERが切り下がる危険もある・・・・と。

成長性については、競合の状況や会社の強みなどとともに、「1 経営者がその企業を成長させる強い意志を持っているか」「この中で圧倒的に大事なのが1です。これだけはホームページや社長の発言などで絶対確認すべきです」として(同書128頁)、もっとも重視されています。このあたりは、定量的な記述はありませんでした・・・しょうがないかな。

「基本的なスタンスは、社長に会ってどれだけガッツがあるのか見極めること」(同書177頁)と書いてあります(笑)

ただの割安株投資だと、バリュートラップ・・・・株価が全然反応しない、ということが当然にありえます。みんなが気づいていないから割安なわけですが、「あたしたちが買った瞬間に割安であることが周知されて株価が騰がる」はずもないのです。その点、「割安株の中から成長株を探す」戦略は、優れていますね。増配や自社株買いなどのカタリストをあてもなく待つ必要はない。


あたしはこの本を読んで、ロードスターに対する評価を新たにしました。ロードスターって、ネットキャッシュつまり(流動資産ー負債)が186億円のプラスです。これで時価総額500億、PER5.6です。時価総額の37%はネットキャッシュで説明できることになります。つまり、実際のPERは3.5に等しい(5.6×(1-0.37)。4年で会社が消滅するとか、毎年25%減益していくことを織り込んでいる株価、ともいえます。

もう、これ以上、下がりようがないですよね。これから2-3年でロードスターキャピタルが全然仕入れができなくて、5-6年後に赤字になれば別ですが、そうでなければ、儲かる。株価が変わらなければ、儲けが積み上がり、配当や自社株買いにまわるので、株価が低い状態が何年も続くこともない。

こんなふうに言えるわけです。


とはいえ、「経営者がその企業を成長させる強い意志を持っているか」はちょっとだけ微妙かな・・・川畑CFOは、つねづね、在庫不動産を1000億円くらい積めば、賃料収入で固定費を賄える、などとおっしゃっていますので、実際にそうなったときに、それ以降、どこまでPLを伸ばすおつもりがあるか・・・・ちょっと微妙ですねえ。

ま、PER5であれば、業績が横ばいでも儲かります・・・5年で赤字にならない限り、ね。


・・・というふうに、

①PERのみならず、ネットキャッシュでプラスかも併せてみること
②PERから、織り込んでいる成長率を逆算すること
③割安株から成長株を探すこと

という3点は、とんでもなく勉強になりました。


現在のあたしのスタンスは・・・・「成長鈍化でPERが切り下がる」(笑)危険が少ない成長株を買ってがんばる感じなんですが、「PERが切り上がる」という上ブレはないんですよねえ。低PER株もこれからはみてみようかな、と思いました。もちろん、ネットキャッシュもみながら・・・つづく。


今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い1日をお過ごしくださいね。

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③バリュエーション、そして売り本の書評

2件のコメント

  • ネオピエロ

    suriaさん、こんにちは。
    興味深い本ですね。

    割安株から成長株を探すと、該当銘柄はなくはないですが、そこに優位性を加えると該当がなくなります…

    ロードスターの場合は大株主の売りがありますが、配当利回りも悪くなく、基本的には持ちやすい気がします。地震さえなければ…

    以前ロードスターとkeeperの優劣について伺いましたが、この本を読まれて見解は変わりましたか?

    • suriaちゃん

      ロードスターの地位がちょっと上がりました。per低いので、清原さんの言う通り、長期的な成長を予測しなくて済みますから、外れる確率は少ないのかな、と、、。

      keeperは、per的には切り下がるキケンしかないので、ちょっと怖くなりましたね笑

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