適正株価は1000~3000円の範囲です。
『バフェットとマンガーによる株主総会実況中継』
ダニエル・ペコー (著), コーリー・レン (著), 長岡半太郎 (監修), 田中陸 (翻訳)
バフェットの株主総会で著者がとったメモ集です・・・30年分!
こうバフェットが言った、マンガーが言った、というのがひたすら羅列されています。だから内容は整理されていないし、「バークシャー傘下の保険会社の契約者数が増えました」みたいな各論も多いので、大変よみにくいです。でも、ほかのバフェット本にはない、投資の参考になる、貴重な発言がみられます。たとえば、
「バフェットは、彼とマンガーは資産の価値をX~3Xと評価した場合、それをXの半分で買おうとすると述べた」【同書73頁より引用させていただきます。】
という記述。
まず、バフェットですら、ある企業の価値を算定すると、X~3Xという、とても幅のひろいものになるってこと。「適正株価は、1000円~3000円くらいかなあ」とか言われても何の役にも立ちませんが、やはり、それくらい幅のある推定をしているということが分かります。
次に、その最低価格の半額で企業を買うこと。バフェットといえば、「安全域」つまり、本質的価値より安く買う、というのが有名ですが、「じゃあ、安全域って、具体的に何%?」という疑問への回答はみたことがありません。「本質的価値より安く買う」・・・・あたりまえじゃん。安全域って、なに?「この企業は、最低1000円だろう」という最低価格の、半額でエントリーすること。うん、ずいぶん、具体的になりましたね。
ほかにも、面白い記述があります。
「バークシャーは、保険のように前もってキャッシュを得られる事業を非常に好む」【同書233頁】
バフェットが、設備投資が重い企業はあまり好まない(最近は鉄道とか電力会社を買っていますが・・・)のは知っていますが、さらに踏み込んで、「先に現金をもらえる企業」が好きだ、というのは初めて知りました。
まさに保険業は、①最初にとりあえず保険料をもらい、②「その後」、事故が起これば保険金を支払います。まず、キャッシュが入ってきて、あとで出ていく。だから、その間に預かったお金を運用できて有利ってわけ。
反対なのが、設備や工場が必要な業種。①最初に莫大なお金を投じて設備投資して、②「その後」何年も経って、設備投資資金を回収していく。最初にお金が出ていくので、利息分、不利になりますし、成長もしづらい。
アマゾンは、商品の仕入れ代金を支払う「前に」お客さんから代金を受け取っていることで有名です。あたしが持っているプレミアグループも、最初に保証料をもらい、その後、延滞が発生したら初めて代金を支払う、というビジネスなので、まずお金が入ります。ビジネスが拡大すればするほど、手元に現金が入ってくる、すばらしいビジネスです。
この本、ほかにも、インフレ、デリバティブ、核戦争への危惧といった話題が毎年、でてきており、あまり加工されていないナマのバフェットを垣間見ることができます。万人向けの易しい本ではありませんが、バフェットファンは買っていいと思います・・・・ほかの和書には出てこない発言がてんこもりです!
今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い1日をお過ごしくださいね。