増資リスクって読めるの?

 

  増資ってなんだろう

 

学生マンションのジェイエスビー、戸建て住宅のケイアイスター不動産が、先日、増資しました。オープンハウスも、昨年、プレサンスコーポレーションを買うときに増資しています。

 

 

「良いM&Aの話がもちこまれた、でもお金がない。」そんなとき、企業は、どうするのでしょうか?

 

 

まずは銀行から借りるのですが、自己資本比率や返済余力から、銀行が貸してくれる金額には限度があります。融資枠はパンパン。そんなときでも、株式会社には、「増資」という選択肢があるのです。1000万株発行している企業であれば、例えば、さらに100万株を発行する。たとえば一株3000円なら、30億円、調達できます。

 

 

ただし、これ、1000万株だったのが、1100万株になっちゃいます。株主が10%増えてEPSが10%減りますので、株価も10%下がります。既存株主にとっては、もれなく株価が10%下がる、恐怖のイベントです。

 

 

「そろそろ増資されそうだ」・・・・・・と読んで、事前回避することは、できないのでしょうか?

 

 

 

 増資に必要な条件

 

そもそも、増資は、どういう場合に行われるのでしょうか。

 

 

①まず、業績と株価が好調であることが必要です。下がっている株価を増資でさらに下げるようなマネをすれば、既存株主も離れて行ってしまいます(倒産が危ぶまれる場合、それでも増資しますが・・・)し、増資を引き受けてくれる機関投資家も集まらない。増資で調達する金額も低くなってしまうでしょう。

 

ケイアイスター不動産は爆益決算の10日後。ジェイエスビーもオープンハウスも上方修正の1-2月後に増資を発表しています(なお、一部昇格に合わせて増資する企業もあります)。

 

ということで、企業からみれば、株価が「妙に」値騰がっているときが、ねらい目。

 

②あとは、資金が必要なこと。おおきなお金が必要っていうのは、つまり大型のM&Aや、土地建物の取得くらいでしょうね。増資の目論見書に資金使途を書かなければなりませんので、M&Aであれば、「既にきまって公表されている」M&Aがある必要があります。資金使途に影響がでてしまうので、「水面下で動いているM&Aなど重大事項もない」ことも必要です。さらに、決算直前など、サイレント期間、つまり「情報漏れを防ぐために決算前にIRを控える期間」の発表も当然避けます。

 

③そして、借り入れができない、ないし好ましくないこと。これは、利息の負担額や自己資本比率から察するほかありませんが、金融業でなければ、自己資本比率が30%台となると、増資されることを視野に入れた方がいいでしょう。ジェイエスビーは38%、ケイアイスター不動産は22%で増資を決定しています。

 

 

増資の量は、資金需要にもちろんよりますが、概ね、10%程度です。できれば、増資後でも、社長一族の持ち分が、会社法上の特別決議を否決できる33%以上確保できると、よろしいです。

 

 

   増資されたら、売るべきか?

 

10%の増資なら、10%、株価が直ちに下がります。短期投資家の方は損切りせざるを得ませんね。中長期投資家は、どうすべきでしょうか?

 

 

ここで、(オーナー会社であれば)①社長がもっている株の株価も下がる ②増資には「引受先」がいる、ということに注意する必要があります。つまり、筆頭株主である社長は、

 

「株価が下がっても、増資で調達した資金を使えばすぐに回復、さらには上昇するだろうし、それをわかって増資を引き受けてくれる機関投資家もいるに違いない」

 

ともくろんで、増資し、増資発表後、機関投資家にそれをプレゼンしに行くのです。自信がなければ、自分が持っている株の価値が下がる増資など、するはずがありません。M&Aだのなんだのをあきらめれば済むのだから・・・・・。

 

 したがって、「その社長以上に企業の未来を見通せる」という自信がないのなら、ホールドしたままにすべき、が原則となります。だって、最強のインサイダーである社長が、増資を選択したのだから・・・・・。ただし、株価が回復するまで1年も2年も待っていられない中期投資家は、損切りやむなしですね。

 

 

 

ということで、

 

①業績と株価が好調だが、②大きな資金需要が必要な業種で、③自己資本比率が低い場合。④決算発表後、次回の決算発表日の1か月前くらいまでは、増資される可能性をちょっとだけ想定しましょう。

 

まあ、ピンポイントで予想することは現実にはムリでしょうが、上記条件全部に当てはまる場合、高値での追加投資や信用買いは、増資直前の投資になる可能性があることをふまえ、少額にとどめて投資するプランは想定しておいた方がいいでしょう。ただ、増資を恐れて優良企業への投資を逃せば、本末転倒です。優良企業なら、1年間で10%以上、EPSが伸びるでしょうから・・・・・・。

 

そして、成長のための増資であれば、業績アップにより株価が戻る蓋然性の方が高い、と言えるの
で、予想外に増資されたら、基本は放置しておけばいいでしょう。

 

 

楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方
市川 祐子  (著) 

 

上記の本は、増資直前直後のIRの方のご苦労が具体的に書かれており、会社側が何を想定して増資に及ぶのか、読み取れる良書です。

 

「公募増資の際には、目論見書にすべてのリスクを記載する必要があることから、M&Aや未公表の決算などのインサイダー情報となるような水面下の重要情報を抱えていてはなりません。M&Aなどがなくとも、必然的に決算発表後で次の決算が締まるまでの年に数回しかない限定された期間」

【同書35頁より引用させていただきます】

 

しか、増資するタイミングがないそうな。上場企業って、大変やね・・・・・・・・。

 

 

読んでくれて、ありがとー!
今日も、増資する銘柄に囲まれた、良い一日をお過ごしくださいね。

 


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投資の総論

2件のコメント

  • hukasi3333

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    めっちゃ勉強になります!
    JR株のPTS相場が下がってたのでなんでだろうと思ったら、JR西日本が増資ってニュースかいてました…。
    しばし、塩漬けになりそうです。

  • suriaちゃん

    SECRET: 0
    PASS:
    >hukasi3333さん
    ありがとうございます!JR西は、成長のためというより、もはや設備投資資金がなかったゆえの増資のようですね、、、
    幸運をお祈りいたします(@_@)

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