生産性を高めるヒミツの指標

3~100店チェーン企業のための、儲かる「個店力最大化」のすすめ方~人時売上倍増の実務と多店舗展開の成功戦略~

チェーン経営指導の第一人者が、「人時売上」倍増の実務と、「多店舗展開」の成功戦略について、 初めてその具体手法を公開した注目の書。倒産寸前だった総合スーパーを赤字体質から黒字体質へと転換、 世界一の人時生産性を更新し続けるまでに進化させた立役者が、店舗を「標準体で儲かる体質にする」ための 数々の業務改革策を、多くの具体事例を交えながら分かりやすく提示。 …

3~100店チェーン企業のための、儲かる「個店力最大化」のすすめ方~人時売上倍増の実務と多店舗展開の成功戦略
伊藤稔 (著)

を読みました。

Keeperの月次の右端に、「人時生産性」って載ってるじゃないですか。あの指標について勉強したくて買いました。著者は西友で業務改革に奔走された方で、とにかく人時売上をあげることが本に書かれています。「店舗が利益を上げるための必要な数値は、人時売上高ですべて把握できます」(同書148頁)と豪語されています。

人時生産性、人時売上とは何か?ある店での売上を、その店の総労働時間で割ったものです(人時生産性については粗利を割る場合の方が多いです)。そのお店の店員さんが1時間あたりいくら売上げたか、ともいえます。

売上を、労働時間で割る、というのがキモです。

つまり、「売上があがるだけ」の施策はとられないことになります。たとえば、スーパーでチラシをまくことを考えてみましょう。

チラシをまけば、お客さんが増えるので、増えた粗利>チラシ代であれば上々・・・・というのが普通の考え方でしょうか。ところが、チラシをまけば、チラシの推敲、特売品の仕入れ、品出し、店内へのチラシの掲示、撤去、来客に備えて人員増など、店員さんの手間=人件費も増えます。ですから、チラシをまいて粗利があがっても、それ以上に人件費が増えては意味がない・・・・。

手間=人件費>増加売上なら、チラシはやめとこう、という判断ができるわけですね。たくさん売上があがりました、でも残業が増えて人件費も増えました、で、利益は増えていません、では話になりません。

また、事業投資するときにも有用です。人時売上8000円の店で、予約システムを導入すると毎日1時間の節約になる、としましょう。計算すると、毎月20万円、年間240万円の節約になり、もし店舗数が100店あれば2.4億円の節約です。システム導入費が1億円かかるとしても、ただちに導入すべき、と判断できます。


また、Keeperでは、(おそらく)社員が4人いて600万円の売上の店舗もあれば、6人いて800万円の店舗もあるはずです。人時生産性が明記されていることによって、「社員の労働に対して効率的に売上があげられているか」、店舗の規模にかかわらず比較することができるという効用もありますね。


ちなみに、月次に明記されているということは、店長の評価も人時生産性でなされている可能性が高いと思います。そうすると、どうなるか?客があまりこなくてヒトデが余っている場合、店長から「ヒトを減らしてください」というお願いすら本社にくるわけです。ヒトが余っていると、人時生産性に悪影響ですからね。谷会長のブログに、たまーに店舗からの報告内容が添えられていますが、報告に人時生産性が明記されています。人事評価の一要素であることは間違いないでしょう。

人時生産性ではなく利益率でみてしまうと、店舗の家賃とか広告費みたいに、店舗各店ではあまりコントロールできない費用まで考慮されることになり、「売上に対して人手のかかる作業はやめよう」という趣旨がぶれます。店長としては、来客数を予想してシフトを調整したり、来客がないときに清掃などの作業を終わらせて、残業や手持ち時間を減らす方向に自然と努力することになります。コントロール可能な経費のほとんどは人件費であるサービス業において、効率化を追求するには良い指標だと思いました。

ほかの指標としてありえるとすれば、売上を店舗の建設費の減価償却と地代で割った指数ですが、賃料関係はお店の努力ではどうしようもないですし、週次や月次で把握する必要はないですね。出店や退店の判断をするときに随時参照すれば足ります。

ということで、人時生産性って、人件費の経費の割合が多い業種では、最強の指標ですね。

Keeperでは、電話で予約確認するのをやめて予約システムを導入したり、洗車ブースとコーティングブースを同じにしてクルマの移動する時間を省略したり、「売上があがっていない作業」の短縮をすすめる地味な効率化がちょこちょこ進んでいます。高い利益率は、人時生産性に着目することで生まれているのかもしれないですね。


ついでに言えば、人時生産性を店長の評価指標にしていれば、売上が頭打ちになってヒトが余ったら、各店舗から「ヒトを減らしてほしい」という要望がくる(ハズ)なので、それを新店の人員に回せば、売上頭打ちに対してある程度のリカバリーは可能ということになります。広く作ったブースは無駄になりますが、ヒトは減らせる。退店ではなく規模の縮小は可能だし、業務の仕組み的にもできるでしょう。


いい話ばかり書くと偏るので、人時生産性の弱点を書いておきます。サービス残業です。人時生産性を高くするという目標は良いのですが、その悪化をごまかすために店長がタイムカードを正確に打たなくなると、末期症状です。そこをケアする仕組みがあるといいですね。

人時売上とか人時生産性について正面から扱った本は、この伊藤さんの著書以外は見当たりませんでした(チェーン店関係の本に多少言及があります)。どういう改革を西友でやったかという物語っぽい進行なのでちょっと読みにくいですが、一読をおすすめします。

今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い1日をお過ごしくださいね。

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車のコーティング本の書評

4件のコメント

  • 佐藤

    最近はキーパー技研特集記事ですね。管理人さんはまた枚数ふやしましたか?

    • suriaちゃん

      はい、六万株、ポートフォリオの70%弱です!取得単価は4200までしか下がりませんでしたが、、、

      • 佐藤

        もうすぐ含み益ですね。

        • suriaちゃん

          ( ´ ▽ ` )

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