株価が騰がっている・・・利確すべき?
いままで、機関投資家のバリュエーションについて見てきました。「買うときのバリュエーション」の話はいいとして、売るときは、どういう基準で売りに入るのでしょうか?書籍を縦覧してみましょう。
①バフェット
「もちろん時として、マーケットはある企業を実体以上に過大評価する場合もあります。そうした場合、私たちは持ち株を売ります。また時には、適正に評価された、あるいは過小評価された有価証券でさえ売ります。それ以上に過小評価された投資対象や、もっと価値が高いと私たちが判断したものを買うための資金が必要なときです」
【「バフェットからの手紙」第5版 ローレンス・A・カニンガム著 長岡半太郎監修 パンローリング 175頁より引用】
ほほう、「銘柄乗り換え」はかなり柔軟に許容するんですね。「永久保有」のイメージが強いですが、実際、バフェットは、3年未満で手放す銘柄が半数を占めます。
「チャーリーと私は、買った当時ペトロ・チャイナは1000億ドルの価値があると考えていた。【中略】2007年後半、時価総額は2750億ドルを超え、ペトロ・チャイナの株価は他の大石油会社と比べ、その値するところに達したと考えた。だからわれわれは40億ドル全部を売ったのだ。」
【「バフェット・コード」荒井拓也著 日本経済新聞社 119頁より引用】
目標株価、あるいは同業他社と比べて高いとき(かな?)に売ることもあるようですが、詳細な判断基準はナゾです。
②ピーター・リンチ
急成長株の売り時について、成長が終了したとき、正当化できないほどPERが高くなったとき、新店舗や既存店舗の売上が落ちてきたときを挙げています(「ピーター・リンチの株で勝つ」ピーター・リンチほか著 三原淳雄・土屋安衛訳 ダイヤモンド社 295頁参照)。
③泉田良輔氏
「現在のバリュエーションが、過去のバリュエーションのレンジの高値にあり、そのレンジを超える大きな理由がないので、上値が重くなっているということがあります。こうしたことは「フェーズ1」【suria注:過去のPERのレンジ内で動くフェーズ】でよくあります。この「フェーズ1」で、ある程度の含み益があれば、いったん利益を確定してしまうのも一つの選択肢です」
【「予想のいらない株式投資法」泉田良輔著 ダイヤモンド社 161頁より引用】
とありますが、その後の上昇を取り逃すこともあるので難しい、ともして、歯切れ悪し・・・・・。
④奥野一成氏
見立てが間違っていることに投資した後で気づいたとき、参入障壁が蝕まれたとき、より投資妙味のある別件が出てきたとき、株価が対フェアバリュー比で2倍、3倍などと大きく上がりすぎた場合に売却する、としています(「教養としての投資」奥野一成著 ダイヤモンド社 214頁参照)。
⑤坂本慎太郎氏
高値の目安として、直近高値+そこまで到達するか理由を考える、過去のPERを参照することを示唆しています(「伝説のトレーターに50万円を1億円にする方法をこっそり教わってきました。」坂本慎太郎著 ソフトバンククリエイティブ 159頁参照)。
⑥小松原周氏
「私がみなさんに推奨するのは長期投資です。「適正な投資ホライゾン【suria注:投資期間のこと】は何か?」という冒頭の問いには、私にとっては「そのようなものはない」が回答です。私が推奨するのは、あくまでも継続的に成長を続ける会社への投資ですから、そのような会社へ投資をしている限りは、売るときのことなど考える必要はありません」【「勝つ投資 負けない投資」片山晃 小松原周著 クロスメディア・パブリッシング 197頁より引用】
「成長している限りでは」ホールド、ということなら異論はないのですが、ほかに魅力的な銘柄が安くなった場合、のりかえないのかな・・・・・。
A 成長の鈍化や参入障壁の消滅など、投資した理由が消滅した場合。
・・・・・売却で異存ありません。「競争力がある成長株」ということで投資したのだから、そうでなければ売るのみ。
B よりよい投資機会が出てきた場合。
・・・・これも、売却で異存ないですね。「ほかの成長株が激安」だったら、乗り換えざるをえません。ただ、含み益があると、利確により税金取られますので、「乗り換えた方がパフォーマンスがよくなるか」見積もるのが結構シビアなのよね・・・・・。
C 過去の高いPER付近、あるいは、正当化できないほど異常に高いPERの場合。
・・・・・これが、もっとも難しいですよね。割高と思われた場合に、一部なりとも売るべきか?そのままホールドか?
そもそも、適正水準のPERがどこなのか自体がふわふわした概念ですから・・・・高いPERのまま推移することもありえるでしょうし・・・・高いかどうかもハッキリとは断言できない・・・・・。成長性が衰えていない前提ですから、その後の成長を取り逃す危険性もあります・・・・。
「年20%成長する成長株」に投資できている、という前提なら、適正価格らしきものより20%ほど高く思えても、売るべきではないと思います。だって、20%割高なら、1年待てばEPSの20%増
加によりすぐに「適正価格」になっちゃいますもの。よって、「平時のPERの1.5倍」みたいな極端な数値、明らかに割高になら売却、というのが、論理的かつ穏当かなー。現実には、いきなり割高になるのではなく、徐々に高値になっていくわけなので、それに応じて徐々に、少しずつ、売っていくことになりましょう。
ということで、
①競争力や成長性に疑問が出てきた場合は、そっこーで売却。
②含み益があまりなくて、かつ、良い対抗馬が出てきた場合も、乗り換えで売却。
ここまで異論なし。
③含み益が大きく、かつ、割高があきらかな場合(平時のPERの1.5倍とか)は、一部を売却検討。特に、割安な乗り換え対象がある場合、より売却が正当化されるでしょう。
というのが、あたしの今の結論かな。高値で売って、同じ銘柄を華麗に安値で買い戻せれば問題なしですが、そうはいかないのが株式投資・・・・・・。
読んでくれて、ありがとー!
今日は銘柄を売却して、良い一日をお過ごしくださいね。
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suriaちゃんの分析はとても理論的でためになります。ありがとう
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>らなすけさん
ありがとうございます!(^^)!
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スリアさんへ・・・心から感謝!
いつもありがとうございます。
毎回 保存して 集めています
そして 学ばさせていただいています
この場をお借りして 感謝の心を 表させていただきます
””すべてのよきことが 雪崩のごとく スリアさんに 押し寄せてきますように””
・・・・・・心から感謝!
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>ありがとうよろしく3さん
そこまでしていただいて、感謝!
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今回の記事内容とは関係ありませんが質問させてください。
株主総会、代表取締役、取締役会それぞれの役割・権限について勉強したいのですが何か良い書籍などありませんか?
具体的には企業買収、増資減資などについて各組織が持っている権限について知りたいなと思っています。ネットで調べてもいい情報が出てこず困っています。
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>comeさん
各機関の役割論となりますと・・・・マジメな法律系の本になり、会社法入門系の本か「取締役会の実務」みたいな本になっちゃうと思います。といっても、株主総会で役員の選任して、重要事項は取締役会で決定して、代表取締役がそれを執行する・・・・ってレベルしか書いてないでしょうから、オススメとは思いません。
実際の実務としては、社長とCFOとかが経営会議して買収や増資の素案を固め、賛成しかしない取締役会で承認をもらい、決定の当日に適時開示・・・というところでしょう。役員に社外から派遣されている方が多い会社は別論かもしれませんが。
そのあたりをきちんと書いた本は少なくともあたしは知りません。実務的過ぎるし、会社の体制によっても異なるからでしょう。ただ、『楽天IR戦記』は、増資前後の社内の動きが書かれているので、多少の参考にはなると思いますので、お勧めします。財務的には借り入れより増資の方が好ましい、社長の持ち分を維持するために今回は10%の増資にしよう・・・みたいな話が書かれています。IR担当とCFOが会議して決めているみたいですね。
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>suriaちゃんさん
ご返信ありがとうございます。
>>各機関の役割論となりますと・・・・マジメな法律系の本になり、会社法入門系の本か「取締役会の実務」みたいな本になっちゃうと思います
そうなんですか……
私が知りたいのはそこまで深い話ではなく、買収する際に簡易合併だと株主総会が要らないとか、議決権を2/3以上握っていればスクイーズアウトできるとかその辺りを整理した書籍やサイトがないかな~と思っています。
suriaちゃんは各機関の権限・役割についてはどのように学ばれましたか?それとも投資判断には不要と判断して特に気にしていない感じでしょうか?
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>comeさん
そうですね、株主総会も取締役会も形骸化しているので、それらの役割が投資判断に必要だとは思っておらず、突っ込んだ勉強はしていませんね。
comeさんが気にされている事項は、「m&aの実務」「スクイーズアウトの法務」みたいな本に散らばって記載されていると思われ、まとめてあるのはみたことないですねー(・∀・)