売上の地図 3万人を指導したマーケティングの人気講師が教える「売上」を左右する20のヒント
池田 紀行 (著)

を読みました。

売上の地図・・・つまり、売上には多数の要因が関わっているので、その要因を地図のように俯瞰してみてみよう、ということです。商品、価格、広告、クチコミ、ＳＭＳ、ブランド、などなど、１９個の要因が列挙されています。

要因が多すぎて、ひとつひとつの要因の説明や具体的な対処法について、記述が薄く・・・・うーん。読み始めは面白かったんですけどね。

せっかく買って読んだので、参考になった点をひとつだけ。

「売上には２種類しかない。トライアル購入とリピート購入である。「買う前に買いたいと思わせるコンセプト力」がトライアル購入を規定し、「買ったあとに買ってよかったと思わせるパフォーマンス力」がリピート購入を規定する。」（同書２４頁より）

Keeper技研は、YOUTUBEでヒットした２０２１年以降に異常に業績を伸ばしました。今でもリピート率は８５％程度のはずです。

ヒット当時、あたしは、「伸びが異常すぎるので、どうせその後に落ち込むだろう」とKeeper技研への投資は見合わせていました。ただ、その後も同社の業績は伸び続け、リピート率も落ちていません。


つまり。


コーティングというのは、

①「買う前に買いたいと思わせるコンセプト力」はあんまりない・・・・コーティング？数万円？え、そんなの、別にいらなくない？一部のカーマニアがするやつでしょ？と多くのヒトが思う。
②けれども、一度やってみると、あ、こんなにきれいになるんだ・・・・「買ったあとに買ってよかったと思わせる」力が強い・・・・ということだったのね、と。だから、youtube効果でコーティングを試すひとが増えれば、その後に売上が戻ることはない。


もしコーティングという商品の性質がそうであれば、Keeperのマーケティング戦略としては、「初めての客に」買ってもらうことに重点を置くことになります。洗車と違ってコーティングはそんなに身近な商品ではないので、多くの人が試そうとすらしない。けれども、試してもらいさえすれば、あとは商品力がモノをいう。どうすれば、試してもらえるか？


露出を増やす・・・・店舗を増やし、認定店のノボリを増やし、ＣＭを打つ。あとは、初めてのお客さんに割り引きするとか、初めてのお客さん向けの廉価なコーティングを用意するとかお試し施工する。「美的観点からキレイになる」ではなくて、「洗車が不要になる」という、別の角度からアピールするとか・・・。

クルマが汚くなった場合に、「近くのガソリンスタンドで洗車する」ではなくて、「そういえば、Keeperコーティングって、ずっとキレイになるんだっけ？」と想起させれば勝ちです。

想起さえしてもらえれば、現状、中古車へのコーティングについては競合らしい競合はいないので、Keeperのコーティングをしてくれるでしょう。


逆にみてみると、施工して、「あ、こんなにきれいになるんだ、買ってよかった」とお客さんに思われなければ、Keeperはもうダメということになります。コーティング剤の性質は変わらないので、ありえるとすれば・・・・・急成長すぎて店員の施工の質が落ち、コーティングのムラがひどくなるとか・・・・？で、数字としては、リピート率なり既存店売上高（特に新人が多い店舗）が減っていくことになるんでしょう。

施工の「質」に関するクレームが増えたら、要注意ですね・・・当たり前ですけども。


あー、そうだ、売上の地図の序文で、売上には複数の要因が関わっており、解像度が低い・・・と書かれていた部分も、なるほどな、と思いました。

Keeperの月次を読むと、売上減少の原因がけっこう特定されて書かれていますが、天候はもちろん、ＣＭによる需要の先食いとか、「何の理由もないたんなる確率的な売上のムラ」など、売上の増減には多数の要因が関わっているのであって、特定するのは容易なことではありません。

東日本の店舗と西日本の店舗の売上を比べるとか、新店が近くにできた店舗に注目するとかで、いくつか仮説は立てられますけどね。「原因が特定可能」という前提にたって、原因をひとつに決めつけすぎるのも良くないな、と思いました。


そんなところかしら。

いろいろ、考えさせられましたが、正直、書籍としてはあんまりオススメではないかも・・・・著者さんのニュースピックスの記事はとてもおもしろかったのですが・・・・。

今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い１日をお過ごしくださいね。