企業に何十億ドルのバリュエーションがつく理由
企業に何十億ドルものバリュエーションが付く理由 ──企業価値評価における定性分析と定量分析
アスワス・ダモダラン (著), 長尾慎太郎 (監修), 藤原玄 (翻訳)
を読みました。「バリュエーション」と題する本は、とりあえず読んでおくことにしています。
要旨としては、「成長ストーリーを数字に変換して、いい感じのバリュエーションをしようね」ということなのですが。洋書にありがちな、「企業価値評価には関係ない余計な叙述がダラダラつづく」・・・という面はありましたが、いくつか勉強になったので、記録しておきます。
1 価格からストーリーを引き出す
「バリュエーションからストーリーを引き出すことができるだろうか。答えはイエスであるし、それができるようにしたい理由がいくつかある。第一に、数字からストーリーを引き出すことができれば、そのストーリーに満足するかどうかを評価することができる」(同書218より)
あたしも、「現在の株価はX円ですが、これだと成長率Y%を前提にしており、さすがにそれはきついよね」みたいにコメントすることがありますが、これって、やっぱり大事ですよね。「現在の株価が正当化されるためには、マーケットはどれくらいの成長率を見込んでいるか?」株価から逆算してみる。
高すぎても低すぎても、あたしがアホなのか、市場がアホなのか、問うことができます。「市場は中計の達成を信頼していない」みたいな情報を引き出すこともできますね。
2 決算はストーリー確認の場
(決算が発表された場合)「EPSが期待を上回っているか、下回っているかに焦点を当てるのではなく、その企業に関するストーリー、さらにはその価値を変更する情報がリポートにあるかどうかを精査する」(同書271頁)
少なくともあたしの場合、投資する理由は、「企業の成長ストーリーが確からしいから」です。決算、あるいは新しいニュースは、「そのストーリーが変更されるか」確認する場なんですね。仮に業績予想にとどかなかったとしても、一過性の外部要因(ビッグモーター問題とか・・・)とか、期ズレであれば、ストーリーに変更はないわけです。
3 成熟企業は、ストーリーではなく数字で判断される
「ライフサイクルの早い段階ではストーリーが数字を左右し、後に数字がストーリーを左右していく」(同書327頁)
成長企業であれば、まだ未確定の部分が多いので、成長ストーリーが企業価値を決める大きな要因になります。成熟企業だと、「これからどうしていく」というビジョンや計画はやはりあるかもしれませんが、どうせそんなに業績に影響はありません。過去の数字(とその継続性)が企業価値を決めてしまうことになります。
バリュエーションの本って、βをどう算出するかとか、事業計画の作り方など、定量面、数字面に偏ったものが多いですが、この本はストーリーを意識していて、なかなかおもしろかったです。成長企業に投資する方は、買って読んで損はないと思います!
今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い1日をお過ごしくださいね。