ワンランク上の株式投資!
外資系アナリストが本当に使っているファンダメンタル分析の手法と実例
松下 敏之 (著), 高田 裕 (著)
「機関投資家のバリュエーションを勉強しようシリーズ」。たぶん、最終回です。
著者は、現役のアナリスト。といっても、証券会社が雇っている、株を買ってもらうためにレポートを書く「セルサイド」のアナリストではありません。ファンドマネージャーの補佐として投資するために分析する「バイサイド」のアナリストです。つまり、儲けるためにガチで分析している立場。
「これで億をもうけました!」みたいなお手軽な雰囲気はゼロ。ビジネスモデルを詳細に確認し、バリュエーションを弾く、という、生マジメーな内容です。しかも、「買うべき企業はどれか」というより、「どうバリュエーションを算出するか」という、もっとも大事な点について、多くのページが割かれている、すごい良書ー!!
だってさ、買うかどうかは、最終的には値段しだいでしょう?そこを厚く論じてくれているのは、とても参考になります。
で!!現役のプロは、バリュエーションをどう判断するのでしょうか?
まず、DDMの解説があります。配当割引モデル、というやつです。
企業価値=2021年にもらえる配当額+2022年の配当額+2023年の配当額・・・・・・・
という感じ。もらえる配当の合計=企業価値、という考え方ですね。なお、「未来にもらえる金額は、今もらえるお金よりは価値が低い」として、少し減額する計算をします。
さらに、PERの水準感について、詳しい解説があります。
①TOPIXのPERと比べる
②過去のPERと比べる
③業界平均のPERと比べる
④PEGレシオ
・・・・・・・と、基本的な方法論はすべて網羅!
③については、「利益構造や財務構造等が違う場合には、同じ業界の競合企業間でもPERが違って当然だ」【同書108頁】など、限界についての解説もきちんとあります。④PEGレシオも、実は、まともな解説をしている本は非常にレアですが、この本は、きちんと解説があります。
「バリュエーションには正しい方法や絶対的な基準となる数字はありません。リスクや成長率等の様々な要素を考慮して総合的に決めていきます。正直なところ、「バリュエーションはアート」であり、たくさんの相場を経験する中で感覚を磨いていくしかないのだと思います」【同書111頁】。
などと、バリュエーション判断がファジーであることについても、正直に書いてくれています。
その後のページでは、分析の実例があります。日本M&Aセンターについて、PEGレシオ1.5~2倍、過去PERは20~40で、仮に将来のPERが20になったとしてDDMで計算しても、下値余地は限定的・・・・といった、アナリストの思考過程がクリアに書かれています。
たぶん、このあたりが、スタンダードな分析手法なんでしょう。バリュエーションについては、とりあえず、この本を持っていれば大丈夫だと思います。それくらい、安定感のある良書です。
でも、とってもマジメな本なので、読みこなすのが少々疲れます・・・・・・・が、たまに読み返したいと思います。・・・・・・・しかし、著者の所属するファンドのパフォーマンスは、S&P500を上回っているのでしょうか・・・・・・・意地悪な疑問ですけど、知りたいなあ!
読んでくれて、ありがとー!
今日も、ステキな銘柄に囲まれた、良い一日をお過ごしくださいね。
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