ごめんねマルクス

ゼロからの『資本論』 (NHK出版新書 690)

コミュニズムが不可能だなんて誰が言った? 『資本論』は誰もがその存在を知りながら、難解・長大なためにほとんど誰もが読み通せない。 この状況を打破するのが斎藤幸平――新しい『資本論』解釈で世界を驚かせ、『人新世の「資本論」』で日本の読者を得た――、話題の俊英だ。 …

ゼロからの資本論、という本を読みました.



別にあたしは共産主義ではなく、むしろ資本をどんどん増やそうと思っている資本主義の犬なのですが、資産が3億円から4億円になって幸福度が上がったかというとそうでもないので、何かヒントがあるかと思って読んでみたんですよ。

イヤミに聞こえたらごめんなさいですが、お金があると、逆に、「あれ、あんまり使わないな」と思うことが増えてきます。1回1万円も2万円もするお食事なんて別に何回も行きたいと思わないし、クローゼットはお洋服であふれているし、お布団はエアウィーブの高いのを買いましたが、それ以上は必要ありません。

あ、旅先で高めのホテルに泊まれるのはとってもいいですけど、それくらいかなー。「明日、株式市場が暴落して資産が半分になっても2億円ある」と思うと心強いですが、意外に、「お金がなくなったらどうしよう」みたいな不安は消えませんね。


この本にも、労働者は、生活保障がないので恐怖から働く・・・それに対して古代の奴隷は最低限の生活保障はされていた・・・みたいなことが書かれています。



さて、マルクスの資本論では、資本家が労働者を搾取する仕組みが書かれています。山や森、土地などの富が私的所有されて、自給自足できなくなった(水も汲めないし山から山菜や薪もとれない)労働者が、しかたなく労働力を売る。資本家はそれを買って商品を生産し、払った賃金以上の利潤を得る。資本家は労働力を買えば買うほど儲かるので、できるだけ長く、安く働かせようとする。労働者は、自給自足できないし、生産設備も持っていないので自営もできないし、分業化により単純労働する能力しかなくなっているので、資本家の言いなりにならざるをえない・・・みたいな話でした。

これって、悪く書くとそういう感じなんですが、まさにチェーンストア理論かと思いました。マニュアルを整備し、誰でもできるように作業を効率化し、スペシャリストを排して人件費を安くあげて、商品価格を下げ、競争力を獲得する・・・・。資本家が搾取、いえ、株主が儲かる経営はだいたいコレですよね。


ただ、日本では人手不足で賃金も上がっています。今はインフレに負けていますが、賃上げの流れは続くでしょう。資本家が優位なのは、「働きたい人がたくさんいて安く雇える」からであって、人が少なくなれば労働者への分配はあがらざるをえません。少なくとも人口減少の日本においては、資本家の優位は勝手に崩れていくんじゃないかしら。



この本では、資本主義の解決策として、「脱商品化」を挙げています。たとえば著者が留学していたドイツでは、医療や介護は無料に近くその意味ではお金は必要ではないし、土日はカトリックの影響でお店が閉まっていて、そもそもお金が使えないから、サッカーするとか庭いじりして過ごすわけです。

つまり、あれを買わなきゃといって頑張ってお金を獲得する必要が低い・・・・そうすると、長時間労働してお金を稼がない・・・・そうすると余暇が増えて生活が豊かになっていく・・・・。豊かといっても高級ホテルに泊まる豊かさではなくて、余暇があってのんびり過ごせる豊かさ、ですけどね。

多少の労働と株式投資で最低限の生活保障を確立しつつ、「サッカーするとか庭いじりして過ごす」のが、個人としては最適解かなあと思いました。「サッカーするとか庭いじりして過ごす」をやらないと、結局生活レベルが上がるだけで、「稼いで使って稼いで」というプロセスは終わらないから。

まあ、投資する企業は、「作業を平準化できてバイトでも回せる企業かそもそも人手が要らない企業」しか投資しませんけど(笑)労働力への分配が多い企業だと資本が拡張しないからね、ごめんよマルクス。


今日も、ステキな銘柄に囲まれた良い1日をお過ごしくださいね。

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投資の総論本の書評

2件のコメント

  • 初心者

    資本主義は永久に不滅です。人類が滅びるまで続きます。とっくの昔に崩壊した共産主義の話をするなんて斎藤氏はどうなんだという話になるでしょうが私はなぜか結構好きです。

    • suriaちゃん

      あたしも意外に楽しく読みました。共産主義のひとなんて、うるさいデモやっている印象しかありませんでしたけど。

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